一般社団法人神奈川人権センターは事業計画に基づき、人権被害者の相談、支援、救済活動から差別・人権侵害を撤廃するために人権教育、啓発事業にも活動の重点を置いています。その一環として人権ブックレットを作成しています。
No.13は、2015年10月に開催された「第26回神奈川人権研究交流集会」での神奈川大学法科大学院教授(当時)の阿部浩己さんの講演録をまとめ、修正加筆したものです。暴力というものを肯定するような状況が拡がっている中で、歴史を振り返りながら国際人権保障の枠組みはその暴力をどうやって封じ込めようとしているのか。1990年に国連総会で採択された「国際法の10年」決議に込められたメッセージの意味とは何だったのか、と阿部さんは私たちに投げかけます。
国連憲章の目的は、人間の尊厳というものをいかに世界の中に行き渡らせていくのかにある。人間が人間らしく生きていく社会を築いていく、そのために法は何を出来るのか、法制度はどのような役割を果たしうるのか、そこに参画していく人たちは何ができるのかということを、日本国憲法や国連憲章は私たちに訴えている。「暴力」とは人間の可能性を奪ってしまう障害であり、この暴力を封じ込めていくということが平和を実現する。ということを、子どもの権利条約をはじめ各条約や世界人権宣言など様々なデータを引用して解き明かしています。歴史、条約や国内法との比較、平和学の視点、といった多角的な面から「国際人権保障」を学ぶことができます。
4月から障害者差別解消法が施行されましたが、今回の講演でも「人間モデルの抜本的な見直し」の項で、障害者権利条約について人種差別撤廃条約など様々な条約を引用して解説されました。この項をお読みいただければ「合理的配慮」の意味するところが理解できるのではないでしょうか。
今回のテーマである「国際人権保障」とは、世界のどこに人間が住んでいても等しく尊厳を保障されるということを実現しようとする仕組みで、人権を保障するということが平和の基礎になるということです。日本国憲法が掲げている脱暴力の理念、これは国際法が求めている理念であり、そして人権保障を通じて日常的に実現していくことができます。
私たちに今求められているのは、「差別撤廃、人権尊重」へ向けた人権意識の定着化と人権文化を育む環境づくりなど、具体的な取り組みと活動です。本ブックレットがそのための一助となることを切に願っています。
*定価 1冊800円(税、送料別)
このブックレットは、今まで発刊されたNo.9「差別と表現」(2002年)、No.11「差別と差別表現~新版」(2008年)に続くもので、No.11発行以降の情勢の変化や人権学校、各種学習会、講演会での討論、教訓をもとに補強、発展させ、No.9、11をさらに豊富化、改訂したものです。
「差別と差別表現」をテーマとし、差別用語や表現の中に差別意識がどのように存在しているのか、差別表現を見抜き克服するには何が必要か、さらには「差別、人権とは何か」を問い、人権課題全般にわたっての提起と解説、実践への助言に至るまでの内容となっており、まさに「人権の入門書」としても最適なものと言っても過言ではありません。
最新号にふさわしく、企業の社会的責任(CSR)、マタニティハラスメント(マタハラ)、性的マイノリティ、ヘイトスピーチ(憎悪表現)、障害者差別解消法制定などに至るまでの今日的課題を取り上げた斬新な内容となっています。
「21世紀は人権の世紀」と言われてから久しい。この間、国内外で人権確立の重要性が認識され、人権基準・諸制度の確立、人権意識の定着化など多くの前進面と共に、一方では悲惨な殺傷事件や差別、人権侵害があとを絶たない現状にもあります。
格差社会の進行と固定化による生活や将来への不安、絶望などの状況がその背景にあり、社会的に弱い立場にある人々への差別意識が表面化し、具体化しているのです。
今求められるのは、声高にスローガンを叫ぶことではなく、何よりも「差別撤廃、人権尊重」へ向けた人権意識の定着化と人権文化を育む環境づくりなど具体的な取り組み、活動です。
一般社団法人神奈川人権センターはこのような人権をめぐる状況の中で、人権被害者の相談、支援、救済活動から差別・人権侵害を撤廃するために人権教育、啓発事業にも活動の活動の重点を置いており、その一環として人権ブックレットを作成し、現在第11号まで発行しています。
この人権ブックレットは、毎年神奈川人権センターが開催している「人権学校」「人権研究交流集会」「国際人権集会」などでの貴重な講演や提起をまとめたものであり、活動にあたっての学習文献としてその役割を果たしています。
ブックレットNo.12もそのための一助となることを願っています。
是非、本書をご一読し、人権教育・啓発活動の一環としてさまざまな場面でのご活用をお願いします。
○定価 1部1,000円(税込、送料別)
Vol | 題名 | 主な内容 | 発行年 | 価格 |
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1 | 多民族・多文化・共生 | タイからの女性出稼ぎの状況と背景/女性シェルターは今/フィリピンにおける日本の介在と出稼ぎ問題/共生の地域作りに向けて/フランスにおける人種差別への闘い ほか | 1994年 | 700円 |
2 | 日本に差別撤廃法を! | 部落解放研究所所長/北海道ウタリ協会理事長/国連人種差別撤廃委員会委員/日本太平洋資料ネットワーク理事長 ほかによる報告 | 1995年 | 700円 |
3 | 地球市民時代とNGO | フィリピンにおける人権擁護運動/インドにおける人権NGO活動/人種撤廃条約の批准と日本の人権/パネルディスカッション「戦後50年・地域から人権の"今"を考える」ほか | 1996年 | 800円 |
4 | 転換期にきた人権 | 軍隊『慰安婦』、戦争責任――今、どう向き合うか/部落解放基本法制定運動と神奈川の課題/人権補償法…人権のインフラ整備を/沖縄と人権/障害者の自立生活と人権 ほか | 1997年 | 800円 |
5 | 人権と文化を考える | 日本文化の源流を探る 被差別民衆の視点から(沖浦和光)/善意の素顔――よりよい理解のために(金時鐘)/自治体の人権政策への提言(江橋崇) | 1998年 | 800円 |
6 | 地域社会と人権 | パネルディスカッション「これからの人権・共生教育を考える」/職業差別を考える/サンフランシスコ人権委員会の歴史的歩みと課題/先住民族アボリジニーの過去と現在 | 1999年 | 800円 |
7 | 自治体と人権システム | フランクフルト市多文化局の取り組み人権システムと人権教育/政府、自治体の人権システムをめぐって/人権の社会システムを/移住外国人の人権/アイヌ民族の歴史と私 | 2000年 | 800円 |
8 | 価値の転換と人権 | (在庫なし) | 2001年 | |
9 | 差別と表現 | 執筆者:雪竹欽哉(企画表現研究所所長) | 2002年 | 1,000円 |
10 | 格差社会と差別 | ジェンダーフリー社会実現へ向けて(江原由美子神奈川人権センター理事長)/人権センターケースワーカー 現場からの証言(人身売買に対する取り組みと課題ほか) | 2006年 | 1,000円 |
11 | 差別と差別表現 新版 | 執筆者:雪竹欽哉(企画表現研究所所長) | 2008年 | 1,000円 |
題名 | 執筆者 | 発行元 | 価格 | |
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「天皇制とニッポン文化の超克横結の時代へ」 | 高橋孝吉 | 明石書店 | 2,000円+税 | |
『暴力・虐待をなくすために――エマージの「バタラー教育的介入プログラム」』第1巻・第2巻セット | DVスペシャリスト協会 | 1,000円 | ||
ドキュメンタリー映画(2013年・105分) 委託販売DVD 「SAYAMA みえない手錠をはずすまで」 チラシ | 監督 金 聖雄 | 図書館・学校 30,000円+税 ライブラリー・団体・企業 60,000円+税 | ||
ドキュメンタリー映画(2016年・119分) 委託販売DVD 「袴田巌 夢の間の世の中」 チラシ | 監督 金 聖雄 | 図書館・学校 30,000円+税 ライブラリー・団体・企業 60,000円+税 |
※以上の書籍等をご入用の方は、一般社団法人神奈川人権センターまでご連絡ください。
※なお、人権ブックレット・既刊の在庫はわずかです。ご確認の上、ご注文ください。
A4版・16頁 月1回発行 年間購読料:4,000円(送料込)
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